3/18/2007

木の話 その1

 普段何気なく接しているものほど、そして便利に使っているものほど、意外にもその本質を理解していない事はよくあります。
 中でも木は住まいに最もたくさん使われているのに、大工さんや建築資材の専門家以外、木のことをあまり知らないのではないでしょうか? 
 学生時代に学んだ植物学では、維管束がどれで篩管と導管がどれ、という具合に試験に必要な知識としての静的な視点での形態学止まりで面白くも何ともないものでした。
 実生活での利用に必要な知識といっても専門職の人たちが知っていれば事が済む知識、例えば伐採の時期、木取りの仕方、乾燥法など木を使う人なら誰でも最も興味を抱くはずの事は教えてもらえなかったのですから無理もありません。
 しかし、木材はパルプ原料として紙に姿を変えるだけでなく、テンセルやレーヨンといった再生繊維としても私たちの生活を豊かにしてくれています。
 化学工場での処理などは専門家に任せておくしかないでしょうが、木材の姿のままで家具や家の部材として使う場合には木の特性をある程度知っておく必要があります。
 木のことをよく知らずに生木のままで加工してできあがってすぐは立派に出来たと思っていても、時が経つにつれて反りや歪みが生じていろいろと支障を来すことになります。
 最近では乾燥技術もずいぶんと進歩し、圧縮乾燥によって杉や檜のような柔らかい針葉樹さえ、広葉樹並の堅牢性と加工特性を持つようになりました。(これまでは家具に使われるまでにはたとえ広葉樹でも普通5年以上は自然乾燥が必要だった)
 戦後植林された杉林が五十年から六十年を経過し伐採にも適当な大きさに成長しており、また杉花粉症などの社会問題もあって杉林の伐採はこれからどんどん進めていく必要がありますから圧縮乾燥技術は渡りに舟という事になると思います。